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2004年自治研岩手県集会レポート

北上市における公立保育園の民営化について」
北上市議会議員  佐藤ケイ子


1. はじめに 「唐突で姑息な保育園民営化提案」

現在北上市には10ヶ所の公立保育所と7ヶ所の民間保育所(5ヶ所の社会福祉法人)があり、ほとんどが定員を超えて入所させている状況である。

問題となった北上市立鬼柳保育園は、60名定員に対して69名が入所しているが、老朽化による移転新築が計画され、引き続き公設公営での運営とすることで進められていた。

当初計画では2004年度(平16年)に建設、2005年度開園をめざし、2003年6月議会では用地購入費、造成工事費、実施設計委託料の補正予算がつけられた。

建設後は、「一時保育」や「子育て支援センター」「ファミリーサポートセンター」などの拠点も要望しており、実施計画への反映を議会答弁で引き出していたところであった。

ところが、2003年9月議会の初日である9月11日の北上市議会全員協議会で、突如として民営化が提案された。しかも、9月議会開会前に提案するなら、一般質問も準備できたものを、開会初日に情報を出し、議論の余地がないような募集決定のスケジュール案を提示してきたため、社民党議員団で抗議を行った。また、市議会議長名でも、6月議会の答弁を無視し議会を軽視している点などを指摘し、決定までの議論の期間を保障するよう市長宛の申し入れ書を提出した。

この突如の民営化の提案に至る前に、市職労としては保育職場などからも情報が入り、何度も計画の公開を求めてきた。しかし、「議員に提示するほうが先」と、当局は交渉を拒否し続けてきた。そして、公開されたのは9月11日で、9月下旬から公募を行い、10月上旬に決定するというものだった。情報を出してから公募と決定までの期間があまりにも短く、もうすでに相手先が決まっていると思われるのに、公募という見せかけだけの公正をつくろう姑息な提案は許せないものだった。

2. 鬼柳保育園の民営化にかかる経過

2001年
3月

「北上市総合計画」で、2002〜2004年度で「鬼柳保育園改築事業」(移転新築のこと)を公表。
2003年
1月

「北上市子どもプラン」策定。民営化推進の調査検討の推進方針は出されたが、2007年度以降に民間が増えることを想定しており、この時点でも鬼柳保育園は公立の位置づけになっている。
6月 補正予算で保育園用地購入費、造成費、設計委託料を予算化。
7月 人事異動により保健福祉部長交替。各社会福祉法人への訪問を行う。
8月 鬼柳保育園の民営化について、児童家庭課で検討しているという情報があり、団体交渉する(8/25)。「具体的なものでなく協議する段階にない」と回答。更に質すも「議会での理解が得られなければ、具体的な検討に入れない」と回答。事前協議の必要性についても確認。
9月11日 市議会全員協議会で「鬼柳保育園の民営化」を提示。市職労にも同内容を説明。
12日 社民党議員団で、公募の基準がないこととスケジュールと決定までの問題点や保育の質とコストの矛盾などを指摘。議会軽視と保護者無視などについて抗議を行う。
18日 団体交渉において、市職労に正式提案。
(その後、再三にわたって交渉を依頼するが、検討中として要請に応じず)
10月17日 企画調整部長交渉するが、「コスト削減が目的」「行財政改革の一環」との見解を繰り返す。
10月20日 市議会全員協議会で改めて民営化方針が出され、公募方法と決定までの時期を当初案から1ヶ月延ばすという説明。
10月24日 企画調整部長交渉。「組合の反対があっても、民営化を進める」と強行姿勢。
10月30日 保育職場集会の開催。
10月31日 鬼柳保育園の父母の会役員に対し、市から民営化案を説明。
11月4日 受託法人の募集説明会開催。市内8法人が要請により参加。募集期間は11月21日までとする。(ある法人は、「この期間で理事会を招集し計画策定をする時間はなく、すでに準備している法人しか応募できない」旨を発言。)
11月6日 市職労と鬼柳保育園の父母の会役員との意見交換。
11月8日 鬼柳保育園保護者に対する市の説明会。
11月13日 「北上市の公的保育を考える会」結成総会。
11月19日 市長交渉。「コスト削減重視」「労働者軽視」の経営感覚、「反対者の声は大きいが賛成者は言わない」という住民の声の受け止め方など、首長としての問題露呈。
11月21日 受託法人応募締め切り。予定の1法人から応募あり。
11月30日 「保育シンポジューム」開催。自治労社福評全国幹事の押野成美さんを講師に「公的保育をめぐる現状と課題」の講演と4人のパネラー(行政・保護者会長・民間保育士・公立保育士)によるパネルディスカッション。
12月9日 市議会一般質問の答弁の中で、法人決定を公表。
12月17日 保育所整備事業費の補正予算で、公設公営の設計委託料を補助金に組み替えする補正予算が出された。4人の議員から「過去の民営化と違う補助の出し方」であること、「公正な応募と競争になっていたのか」、「補助がほとんどで設置者負担が少なすぎる点」「補助金額の算定基準の問題」などの質問がされたが、賛成多数で可決した。
12月24日 「公立保育園の民営化に反対し子どもと親が安心できる保育施策の充実を求める請願署名」3,807人分を提出。公立と民間の保護者、保育園職員、市職労などで取り組みの第1次分を提出し、民営化反対を要請。
2004年
1月14日

保育園職場分会長会議。
1月15日 法人による「父母会説明会」。運営方針と建設計画概要を示す。
2月4日 「請願署名」第2次集約分682筆と市長あての要望書を提出。鬼柳保育園民営化の見直しと今後の保育施策の充実を求めた。

3. 市内の保育園の推移


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合併以降に統廃合されたのは、岩沢保育園(旧和賀町)、仙人保育園(旧和賀町)、藤根保育園(旧和賀町)、野中保育園(旧江釣子村)でいずれも公立保育園。今度の鬼柳保育園は廃止ではなく民間への移管(民設民営)となる。

4. 問題点の整理

@ 民営化への方針転換と法人決定過程の問題
突然の民営化への転換は、議論もできないスケジュールであり、議会や保護者への説明責任を果たしていない。
過去における保育園の廃止と民営化の際は、新しい保育メニューの提示や運営主体の決定など議会にも説明され、何度かの質疑討論を経て、予算議会で正式提案されたが、今回の経過は問題がある。
一番の当事者である保護者に対しては(役員は10月30日)2ヶ月も遅れてやっと11月8日に説明を行ない、保護者から不信感を抱かれた。
募集にあたっての保育メニューの条件は、開所時間も特別保育メニューも現在より拡大されるものは無く、保育士の条件としてつけたのは、1年以上の経験者を2分の1以上配置することで、保育の質を確保する条件としては、あまりにもズサンすぎる内容にビックリするもの。

A 保育全体の財政負担と保育園のコスト論について

民営化の最大の理由は「コスト削減」と言うが、北上市での民間と公立の比較をした場合、同規模の保育園で3割程度公立保育園が高いということだった。

しかし、14年度決算書で計算したところ、児童一人当たりの経費は、公立は89,005円、民間が76,608円で16%の差となり、「3割高説」は当局が意図的に流したものであった。

しかも、「わがの里保育園」が開園した13年度から、本当にコストが削減されたか。12年度と13年度を比較すると全体で5200万円の増加、13年度と14年度を比較すると7300万円の増加で、児童数の増加と比例するだけで、全体コストの削減には至っていない。現在の職員はすぐ退職するわけではなく、新たな委託料がかかるだけでないか。

また、民営化によって公立保育園での順調な新採用ができないために、年齢構成が高くなり、コスト高にならざるを得ないということも生じる。周辺部のように地理的に定員が満杯にならず、民間が受け入れてくれない保育園の場合は、どこまでコストで比較することが可能なのか。

民間としては、採算制を重視することは当然であり、いくらニーズがあるからと言っても採算性が取れなければ実現不可能になり、保育の質とコスト論は矛盾する。

B 民間保育園どおしの競争の激化について

採算性、効率性が求められ、低賃金・若年雇用・臨時職員化などで採算性が確保されるかもしれないが、民間の経営者が心配しているのは、「採算が取れれば現在の運営費補助は打ち切られ、益々不安定雇用が進むという悪循環と、保育の質の低下」を問題にしている。

そこで、民間保育園の経営安定化のため、児童の入所や障害児の入所調整を図ってきたのが公立保育園であり、公立が調整せず、競争を激化させることは、民間の生き残りにも影響を与えることになりかねない。

また、保護者に選ばれる保育園は、一見、親のニーズに応えた良い保育をしているように思われがちだが、親の顔色を伺い、問題のある親に対してもモノを言わないこと、発表会やイベントで子供に立派に演技させることによって、親が喜び、そして選ばれる保育園になる、という一面も持っている。子供の生活環境を思えば、親に対して厳しいことも言わざるを得ないはずだが、そんな保育園は敬遠される。民間の保育園では、モノを言わない保育士を求めているのが実態である。

C 子育てプランとの関係

2003年1月に策定した子育てプランは、公募の委員も含めた多くの方々の意見が盛り込まれた。しかし、具体化についてはまだ着手されていない。また、保育園の民営化は同じ課どころか係員にも情報を出さず、一部だけで進められている。

このような状態で、子育てプランを推進する体制と、今後の子育て支援や保育サービスの充実は確保されるはずもなく、プランの具体的な取り組みを重視すれば、安易な民営化には至らなかったはずである。

ましてや、人口増加策を検討している最中ならば、子供の関係する所から経費削減をするのはやめて、北上こそ「子育て支援が充実している町」として確固たる施策を示すべきである。
 
5. 「北上市の公的保育を考える会」について (北上市職労総括文から)

鬼柳保育園をはじめ市内公立・私立各保育園保護者、保育園労働者などとともに、11月13日「北上市の公的保育を考える会」を結成し、幅広い運動を展開してきた。

「考える会」では、鬼柳保育園保護者が抱える不安、保育園民営化の問題点を明らかにするとともに、補助金の見直しをはじめ保育をめぐる環境の変化によって、今後さらなる合理化が懸念される現状を踏まえ、市民を対象とした「保育シンポジウム」の開催、保育園の民営化に反対し、保育施策の充実を求める署名に取り組んできた。

11月30日開催した「保育シンポジウム」では、自治労社会福祉評議会全国幹事の押野成美さんを講師に迎えての基調講演とパネルディスカッションを行い、参加した市民からは、「コスト削減を目的とした民営化には疑問」「子どものことを考えた保育施策を求める」など、民営化を疑問視する声が相次いだ。

「考える会」の会員や各労働組合を通じて取り組んだ署名行動は、12月24日に第1次集約分3,807筆、2月4日に第2次集約分682筆を市に対して提出、2月4日には、市長あての要望書を提出、鬼柳保育園民営化の見直しと今後の保育施策の充実を求めた。

市当局は、このような反対運動にも、民営化方針を見直すには至らず法人を決定してしまったが、この問題は今後の保育のあり方を含めた問題であり、市職労として、このような市民と連携した取り組みをさらに強めていくことが必要ととらえている。





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